2024年 4月27日(土)
更新日:2023-05-09

派遣社員でも住宅ローンによるマイホーム購入は可能か

金融機関のイメージ画像

派遣社員という立場上「住宅ローンを組んで一軒家を購入する」という発想すら私にはありませんでした。

派遣社員として働く方でも毎月の給料の一部を貯金または返済に回すことは可能です。
冷静に考えてみると、雇用形態により住宅ローンが組めないということは不思議な話です。

実際に、私は収入が不安定ながらコツコツと貯金し続け、その結果として一軒家の購入に至りました。

今回は、「派遣社員でも住宅を購入するためにローンを組むことができるか」をテーマに調べた結果についてお話します。

はじめに

報告書のイメージ画像

国土交通省が公開している『令和4年度民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書』(以下「調査報告書」) を基に、非正規雇用でも住宅ローンの借り入れが可能か調べてみました。

調査報告書

住宅ローンを提供する金融機関は数多くありますが、各金融機関ごとに審査の内容は異なり、どの金融機関も審査内容や基準についての詳細は公表していません。

しかし、インターネット上の住宅ローンに関するサイトを見渡してみると審査の際に重要視される項目は共通しているようです。

この記事では先の調査報告書も交え、重要視される審査項目から派遣社員でも借り入れが可能であるか考えてみます。

住宅ローン審査の対象となる項目とは

審査項目① 勤務状況

最も気になる派遣社員でも審査の対象になるかという点ですが、「(すべての金融機関ではないが)対象になりうる」ようです。

調査報告書によると、金融機関が審査の際に考慮する項目として挙げている割合は以下の通りです。

・雇用形態 71.6%

・勤続年数 93.2%

・業種 34.4%

・雇用先の規模 25.4%

更に、上記割合の基となった資料をみてみると

雇用形態 (回答数:727件)

・派遣社員は対象外 (432件)

・契約社員は対象外 (381件)

・自営業者は対象外 (11件)

・その他 (244件)

勤続年数 (回答数:947件)

・3年以上 (130件)

・2年以上 (39件)

・1年以上 (589件)

・その他 (215件)

上記の内容から、『雇用形態』を "考慮している" 金融機関が71.6%であり、差分の28.4%が "考慮していない" と読み取れます。
(ただし、考慮しているかの明言を避ける意味合いで無回答の可能性もあるため断言はできません。)

また、『業種』『雇用先の規模』が低い割合であることから、個人の働き方に重きが置かれています。

金融機関の回答を見てみると、「非正規雇用(派遣社員・契約社員)は対象外」と明言している回答数が全回答数(727件)と一致していないことから、「非正規雇用も対象」である金融機関の存在を示唆しています。

この調査報告書で気になったことは、金融機関が『雇用形態 (71.6%)』よりも『勤続年数 (93.2%)』を重要視している点です。

派遣社員でも1年以上の勤続年数があることにより、住宅ローンの審査を通過できる可能性が高まるようです。

審査項目② 年収

・年収 92.9%

年収 (回答数:944件)

・100万円以上 (258件)

・150万円以上 (405件)

・200万円以上 (71件)

・250万円以上 (25件)

・その他 (205件)

調査報告書の結果から『年収』は審査項目として重要視されており、対象とする年収は「100~200万円以上」に集中しています。

非正規雇用(派遣社員・契約社員など)の平均年収が197.6万円(国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」参照)であることから、非正規雇用の年収も考慮しての条件だと考えられます。

審査項目③ 年齢

・完済時年齢 98.7%

・借入時年齢 97.2%

完済時年齢 (回答数:1003件)

・85歳未満 (12件)

・80歳未満 (763件)

・75歳未満 (42件)

・70歳未満 (12件)

・なし (5件)

・その他 (162件)

借入時年齢 (回答数:988件)

・75歳未満 (3件)

・70歳未満 (174件)

・65歳未満 (204件)

・60歳未満 (33件)

・55歳未満 (8件)

・その他 (590件)

調査報告書の結果から『年齢』に関する審査項目が最も高い割合を示しており、『雇用形態』以前に「返済できる年齢かどうか」が重要であるようです。

例えば、35年の住宅ローンを希望する場合、完済時年齢の上限が80歳ならば遅くとも45歳までに申し込む必要があります。

『借入時年齢』の「その他 (590件)」が多いことから、50歳未満であり比較的若い年齢であれば審査を通過しやすくなると考えられます。

審査項目④ 健康状態

・健康状態 97.9%

健康状態 (回答数:995件)

・団信加入が必要 (874件)

・団信加入は不要 (9件)

・団信加入は選択可能 (102件)

調査報告書の結果から『健康状態』に関していえば、団体信用生命保険(団信)への加入が必須のようです。

『団体信用生命保険』とは、住宅ローンの返済中に申込者が死亡した場合、保険金により残りの住宅ローンが免除される保障制度です。

この生命保険に加入するには健康状態を告知する必要があるため、健康なうちに住宅ローンに申し込むことが重要です。

審査項目⑤ 現在または過去の借入および返済状況

・カードローン等の他の債務の状況や返済履歴 65.1%

・申込人との取引状況 48.0%

調査報告書の結果では高い割合ではありませんが、インターネット上にて住宅ローンの審査について調べていると『現在または過去の借入および返済状況』に関する記述を頻繁に目にします。

現在の状況であれば、マイカーローンや教育ローン、クレジットカードの分割払い、リボ払いなどの借入状況が審査対象になります。

申込者の『信用情報』として過去の情報が残っている場合、他社からの借入やクレジットカードなどの返済状況、債務整理の有無などの履歴が審査対象になります。

申し込みの際、多くの借入がある場合や信用情報に返済時の滞納に関する内容などが残っている場合は住宅ローンの審査に影響します。

= 余談 =
日本には主に3つの個人信用情報機関があります。

・全国銀行個人信用情報センター(KSC)

・株式会社 シー・アイ・シー(CIC)

・株式会社 日本信用情報機構(JICC)

信用情報の履歴は基本的に5年を経過すると削除されます。

情報開示を請求することで履歴の閲覧も可能になるため、過去の借入や滞納などの情報が削除されたか確認してから住宅ローンに申し込むことも一つの手です。

審査項目⑥ 担保評価

・担保評価 96.1%

担保評価とは、住宅ローンの対象となる土地や物件の価値が融資する金額に見合っているかどうかの判断基準です。

住宅ローンの返済が困難な場合、金融機関は物件を差押・売却し、残金の補填を行います。

新築物件であれば資産価値が高いため問題はありませんが、築年数が古く耐震基準を満たしていない中古物件などは価値が低いため、審査に通らなかったり借入金額が少なくなってしまうことが考えられます。

調査報告書の結果からも『担保評価』に関する審査項目は高い割合を示しています。

審査項目⑦ 連帯保証人

・連帯保証 93.1%

住宅ローンでは原則的に保証人は不要です。それは先述した住宅ローン対象の物件が担保になっているからです。

しかし、下記の例では連帯保証人が必要になります。

・ペアローンを組む場合

・親名義の土地に家を建てる場合

・夫婦で収入を合わせて住宅を購入する場合

・共有名義の土地や物件を購入する場合

など

『ペアローン』とは、同一物件に対して夫婦や親子など2人がそれぞれ住宅ローンを借り入れることです。

ペアローンの対象となる2人は互いが連帯保証人になり、団体信用生命保険(団信)への加入や住宅ローン控除が受けられます。

派遣社員でも住宅ローンの審査を通過できるか

審査のイメージ画像

派遣社員でも住宅ローンの借り入れが可能か見てきましたが、私が想像していた以上に審査を通過できる可能性があると感じました。

以前の私は「非正規雇用(派遣社員・契約社員など) = 返済能力が低い」ということから、借り入れの可能性は限りなくゼロに近いと思い込んでいました。

調査報告書から読み取れることは、金融機関の審査とは雇用形態だけを対象にするのではなく「申込者個人に返済能力があるか」を重要視し、それを総合的に判断しているということです。

また、派遣社員として働く私の観点から言えることもあります。

第一に、自己都合で勤務先を辞めるにしても、その際は契約満了のタイミングで辞めるべきです。
契約途中で辞めることは、ただでさえ審査対象として不利な立場を更に悪くする可能性が高いからです。

第二に、雇用が不安定であっても貯金し続け、その自己資金を『頭金』として提示することにより借入金額を減額することで借入時や完済時の『年齢』といったハンデの解消に繋がるのではないかと考えます。

また、素人考えながら購入予定物件に対し『頭金』をより多く用意することにより、融資額と担保評価額の関係性から審査が有利になるのではないでしょうか。

派遣社員で働く方がマイホームを持つことは "夢のまた夢" と思っていましたが、住宅ローンに対する考え方そして行動次第では "実現可能な夢" であると今回の記事を執筆して感じました。

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