まるで新築? 購入した中古住宅を自分好みに作り変える方法

築年数がそれなりに経過している中古住宅であれば、どこかしら傷んでいるのは当然です。
それに、家族の要望に合わせ間取りを変更したり、自分の趣味を反映した空間に作り変えたくなるのも必然だと思います。
そこで考えることは「リノベーション」や「リフォーム」といった古い家屋を再生させる方法。
今回は、購入した中古住宅を新築のように甦らせ作り変える方法についてお話します。
はじめに
本記事を読む前の注意
本記事では、中古住宅(木造戸建住宅)を作り変える予算の参考として『目安』を設けています。
しかし、インターネット上の数あるサイトを調べてみましたが、その値段設定にはばらつきがあります。
業者ごとに見積内容が異なったり、地域によっても価格差が出るため、全国的に通用する指標化された値段設定を探すことは困難です。
そのため、実際の見積と本記事に掲載された値段設定を比較した結果、誤差が生じるのは当然のことです。
以下の内容については「こんなものなんだ」と参考程度にお読み下さい。
また、費用の基となる「坪数」も記載されていますが、その場合は家屋全体の床面積である「延床面積」を指しています。
「リノベーション」と「リフォーム」の違い
"改修" を指す言葉に『リノベーション』と『リフォーム』があります。
いくつかのサイトを調べてみましたが、専門家でも使い分けに一貫性がないように感じられます。
・機能の改善やデザインの刷新など新たな価値を与えること
・家全体または間取り変更といった大規模な改修
・古くなった家の内装や設備を元の状態にすること
・以前と変わらぬ生活を送れるようにすること
・床や壁とった部分的で小規模な改修
定義(?)として分けてはみましたが、白黒はっきりせず、グレーな印象があります。
本記事では、分かりやすく「リノベーション = 大規模な改修」「リフォーム = 小規模な改修」として話を進めていきます。
中古住宅を丸ごと作り変える
方法① 建て替え

『建て替え』とは、文字通り古い家屋を取り壊し、新たに家屋を建て直す方法です。
壁や屋根だけではなく基礎まで取り壊し、更地に戻した後に基礎部分から建てていきます。
地盤に問題があればこの段階で地盤改良工事を施すことも可能であり、以前の中古住宅の不安も解消され『新築』といっても差し支えのない仕上がりになります。
予算に合わせて希望するデザインや間取りに変更できることが最大の魅力です。
目安となる費用
費用は大きく分けて『工事費用』『諸費用』の2つになります。
・解体工事費: 古い家屋を解体する費用とその廃材の処分費用
・本体工事費: 新しい家屋を建てるための費用
・別途工事費: 電気・水道・ガスの設備工事費、建築現場の安全対策費など
例)30坪の木造家屋を解体後、坪単価70万円で40坪の家を建てる場合の工事費用の目安
【 解体工事の相場 】(1坪あたり) 5~8万円
坪7万円とした場合: 7万円 × 30坪 = 210万円
【 本体工事 】坪単価70万円
70万円 × 40坪 = 2800万円
【 別途工事の相場 】本体工事の20%程度
2800万円 × 0.2 = 560万円
工事以外でかかる費用全般。
・契約時に使用する印紙代
・登記に必要となる税金や手数料
・火災保険料
・住宅性能評価や長期優良住宅の申請費用 (※)
・仮住まいや引っ越しの費用
など
【 諸費用の相場 】本体工事の3~6%程度
5%とした場合: 2800万円 × 0.05 = 140万円
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合計: 3710万円
上記の費用に含まれていませんが、家屋が建つ土地が軟弱な地盤であった場合、地盤改良工事や特殊基礎工事の費用が追加されます。
また、工事現場に大型車両が入れない場合は人力にて資材を運搬する必要があるため、その分の人件費も追加されます。
住宅の設計や施工について国に登録された第三者機関が法律に基づいて客観的な基準で評価する住宅性能評価。その評価結果は『住宅性能評価書』として交付されます。
申請は義務ではありませんが、住宅性能評価書を取得すると住宅ローンの金利が優遇されたり地震保険料の割引などを受けることができます。
評価機関により差がありますが、申請手数料は 10~40万円程度。ただし、オプションである追加項目や評価の等級など内容によって審査費用が更に膨らみます。
着工前に都道府県知事等に申請を行い、一定の基準に適合していれば長期優良住宅の認定を受けられます。完成後の建物検査はなく、書類審査のみで認定されます
申請は義務ではありませんが、認定を受けると住宅ローンの減税や固定資産税の減税などの税制上の優遇を受けることができます。
申請および審査にかかる費用は所管行政庁により異なりますが 5~6万円程度。実際は住宅建設会社や工務店に代行してもらうため手数料を含め 20~30万円程度。
方法② リノベーション

『リノベーション』は比較的大規模な改修工事に使われる言葉ですが、ここでは中古住宅を丸ごと新築のように甦らせる『スケルトンリノベーション』について取り上げます。
(「スケルトンリフォーム」「フルリノベーション」「フルリフォーム」とも言います。)
柱や梁、基礎といった構造躯体だけを残す、文字通り「骨」の状態に戻し、そこから内装や設備機器を一新していく方法です。
間取り変更も可能であり、「複数の部屋を1つに」「間仕切りにより部屋を分ける」「水回りの配置を変更」といった要望にも応えられます。
目安となる費用
費用は大きく分けて『工事費用』『諸費用』の2つになります。
・解体工事費: 構造躯体の状態まで解体する費用とその廃材の処分費用
・補強工事費: 構造躯体や基礎の診断費用とその工事費用
・設備費: 新しい内装材や水回りの設備などの値段
・設備工事費: 給排水管や電気配線などの工事費用
・解体工事費: 約50~100万円
・補強工事費: 約20~320万円
・設備費: 約330~800万円
・設備工事費: 約150~400万円
工事以外でかかる費用全般。
・契約時に使用する印紙代
・建築確認申請手数料 (※)
・仮住まいや引っ越しの費用
など
・諸費用: 約75~200万円
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合計: 約600~1850万円
大規模なリフォーム工事の場合、自治体あるいは民間の指定確認検査機関による "建築確認" が必要になり、
床面積が10㎡を超える増築工事(準防火・防火地域の場合、面積に関わらず確認申請が必要)や主要構造部(壁・柱・床・梁・屋根・階段)の過半の修繕または模様替えが対象となります。
(一般的な規模の2階建て木造住宅は申請不要。ただし、増築工事は該当します。)
申請費用そのものは1万円前後ですが、業者に申請を依頼すると相場として 15万~30万円。施工面積や工事規模によって金額に差が生じます。
「建て替え」と「スケルトンリノベーション」お得な選択は?
両方とも仕上がりは「新築」のようです。
違いといえば、構造躯体を残しているかという点のみです。
その分、同規模の建物であれば「スケルトンリノベーション」の方が費用を抑えられます。
一般的にスケルトンリノベーションの費用は、新築の70~80%だと言われています。
ただし、構造躯体を残している分、その "状態" が最終的な費用に影響してきます。
雨漏りや結露で構造材が腐りシロアリの被害が深刻だったり、基礎に大きな亀裂が生じていた場合、その補修にかかる費用が追加され総額も膨らみます。
結果として、新築の費用を上回るのであれば「建て替え」を選ぶべきです。
ただし、物件によっては『再建築不可物件』という、法律により建て替えができない場合もあります。
この場合、たとえ新築の費用を上回ったとしても「スケルトンリノベーション」しか選べません。
中古住宅を部位ごとに作り変える
方法① リフォーム

一棟まるごと作り変えるには高額な費用がかかりますが、部位ごとの改修工事である『リフォーム』であれば費用を抑えることができます。
壁紙の張り替えから外壁や屋根といった比較的規模の大きなリフォームまでその種類も様々。
1部屋のみ自分好みにまるごとリフォームするも良し、費用に応じてコツコツと長期間かけて中古住宅全体を作り変えることも可能です。
目安となる費用
・壁紙の張り替え: 約800~1500円(1㎡あたり)
・フローリングの張り替え: 約10~25万円(6畳)
・間取り変更リフォーム: 約20~350万円
・キッチンリフォーム: 約30~150万円
・トイレリフォーム: 約10~70万円
・浴室リフォーム: 約80~200万円
・外壁リフォーム: 約50~350万円
・屋根リフォーム: 約50~350万円
・耐震リフォーム: 約25~150万円
方法② セルフリノベーション

これまで紹介してきた方法は専門業者に依頼するため、工事費用(特に人件費)がかかります。
そのため、自らリフォーム(またはリノベーション)を行う選択もあります。
最近では、ホームセンターなどで建築に必要な工具や資材を準備し、本業の合間に施工を行う "素人" も増えてきています。
また、『セルフリノベーション』を行う前提で中古物件を購入し、予算と空き時間に応じてコツコツと改修作業を楽しむ方も見かけます。
昨今では、建築関係の仕事に関わったことのない "ずぶの素人" でも YouTube などの動画から専門技術を学び、マイホームにて実施することができます。
本職の大工から素人が挑戦するものまで様々な動画がありますが、中には玄人並みに仕上げる素人も存在するため、見ていて大変参考になります。
費用を抑える際の注意点
工事費用を抑えることを重要視するのであれば『セルフリノベーション』を軸に改修工事を行う方法があります。
改修費用を貯めながら着工時期を自分で決められることも利点になります。
自らの労力を惜しまず施工することにより人件費が省かれるため、その分の費用をグレードの高い資材の購入に回すこともできます。

ここで注意したいのは、すべて自身の手で施工することが "節約" に繋がるわけではないということです。
例えば、外壁や屋根をリフォームする際に必要な「足場」。
この足場は工事が終われば不要になるため、1回の工事のために購入し保管するだけでも高く付きます。
また、外壁や屋根のリフォームは難易度が高く、その仕上がりが今後の建物の寿命に直結するため、熟練の業者に任せるべきです。
工事のタイミングとしても、外壁と屋根のリフォームを1回で済ませることにより、足場にかかる費用を1回分抑えることができます。
節約のために危険を冒す愚行

先に挙げた動画では、高い専門性および経験が必要な技術でも見て学ぶことができます。
それだけで「自分でもできる」と錯覚し、工事費用を抑えるために自らの手で挑戦する方も中にはいるかもしれません。
最後に「無謀な挑戦で命を危険に晒すこともある」と付け加えます。
例えば、専門的な資格が必要な電気の配線工事やガスの配管工事などが挙げられますが、いずれも命に関わる重大な事故に繋がります。
自身または家族の命、マイホームという財産を失うリスクを負ってまで費用を削ることに執着することは馬鹿げています。
"費用を抑えること" に固執せず、仕上がりや安全性も考慮して専門性の高い工事は業者に任せるといった柔軟な考え方が大切です。